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No.1032:古都の桜
(4月18日分)

桜の季節である。満開の木の下に立つとき、花に酔い、さまざまなことを思い出す▼4月16日
は川端康成(1899〜1972)の忌日だった。川端の『雪国』は名高い作品であるが、『古都』も
著名である。祇園祭りの夜桜の下に赤子がいた。あまりにも可愛い赤子だったので、連れ帰っ
てしまう。だがその赤子には双子の姉妹がいた。生き別れのまま姉妹は成人する▼赤子は実
は捨て子であった。養親はそれを伏せたまま夜桜の下での物語にしてしまう。花の美しさは時
に狂おしいが、そのような狂おしさを作家は柔らかく包み込み、捨て子の物語を艶やかに彩
る。哀しみの物語の始まりは桜がふさわしく、古都の移ろいが彷彿とする▼川端は生き別れの
姉妹を成人したのち、偶然にも出会わせる。あまりにもそっくりな2人の娘はお互いを意識せざ
るを得ない。そして事実を知っていく。古都の四季折々の風情が迫り、新聞連載中に評判にな
った。川端は文化勲章を受賞し、作品は海外でも翻訳。ノーベル賞への道を開く▼桜は日本
人の心情に深く根ざしている。芭蕉(1644〜94)には「さまざまの事思ひ出す桜かな」がある。
良寛(1758〜1831)には辞世の歌「散る桜残る桜も散る桜」がある。桜は日本の心象風景
である▼長岡の桜もきれいに咲く。福島江では川面に映え、満開から花吹雪になり、ついには
川面をおおいつくす。園芸研究家の駒野廣治が1924年から12年の歳月をかけて植えたのが
始まりという▼四季の移ろいをうつして、今年も桜が咲いている。(とけいそう)



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