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悠久録(過去の悠久録はこちら)
No.771:今日は二葉亭四迷の命日
2014年5月10日掲載

今日は小説家で翻訳家でもあった二葉亭四迷の忌日である(1864年〜1909年)。二葉亭
が苗字にあたり、四迷は名前である。本名は長谷川辰之助。当初は長谷川二葉亭と名乗って
いた▼代表作は『浮雲』であろうか。文語と口語の統一を図った傑作とされている。明治から大
正期の文章表現は日常語とは別の表現様式だった(文語体)。四迷は『浮雲』で、口語体との
統一を試みたのである(言文一致の文体)。だから当時としてはずいぶん読みやすかったにち
がいない。だが今となればやはり難しい。難解である▼当時の日本語は今の日本語とはまる
で違う。文語体は難解な文字の羅列である。それでもそのころの日本人には普通のことであっ
て、さほど難しい文章ではなかったのだろう。この作品は評判になる。読みやすさも手伝ったの
かもしれない。だが四迷にとっては不本意なことがあった▼四迷は名を挙げたのであるが、実
は坪内逍遥(1859年〜1935年)の本名「坪内雄蔵」を借りて出版してしまった。逍遥はすで
に文壇で名を成していた。駆け出しの四迷が世に出るためにはやむを得ないことであったの
かもしれないが、他者の名を借りたことは生涯のトラウマになったようである。自分自身を「くた
ばって仕舞(め)え」と罵って、筆名を二葉亭四迷に変えたという。一説には父親に叱責をうけた
とも。よほど悔いたのであろう▼すでに名を成した者が後進にチャンスを与えた形であるが、
逍遥はこの時印税の半分を取ったという。名義貸しもなかなかなものである。(とけいそう)

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