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悠久録(過去の悠久録はこちら)
No.810:ブリタニー・メイナードさんの尊厳死

「「人の命は全地球より重い」として死刑を合憲とした最高裁判決がある(昭和23年3月12日・
大法廷)。同判決により、当時19歳の無職の少年は、母親と妹を撲殺した罪で死刑になった▼
深沢七郎(1914〜1987)の『楢山節考』(ならやまぶしこう)は、支えることができなくなった
高齢者を山に捨てる哀話である。高齢者も粛然としてその慣習に従う。こうして新たな命を扶
養するゆとりが周囲に生じ、地域社会は維持される。だがその新たな命も、いつの日か山に捨
てられる。『楢山節考』の悲哀を脱し、命の尊厳を守る今の時代は、人間の英知が地域社会の
力を高めた結果である▼米国人女性、ブリタニー・メイナードさん(29)は11月1日、医師が処
方した薬を自ら飲んで死亡した。末期の脳腫瘍を患った彼女は、余命6か月余りとの宣告を受
ける。死にたくないとし、平穏でありふれた形でのエンディングを望みながらも、尊厳死(医師の
処方薬を自分で飲む死)を選ぶ。そこで尊厳死を認めているオレゴン州へ移住する。延命治
療廃止を是とする州がほとんどの米国でも、尊厳死を認める州は同州のほかワシントン、モン
タナ、バーモント、ニューメキシコのみである。彼女の選択は論議を呼ぶが、賛否両論のなか
で彼女は旅立った▼死にたくないと語っていた彼女である。延命は人としての尊厳を失わせ、
人格も会話も失い、全てを失うと語る。周囲の哀しみでもあると述べる。全地球より重い人の
命である。彼女の死は、有限な命の重さを改めて考えさせた。(とけいそう)

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