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No.849:花見酒の経済
(4月28日分)

落語の「花見酒」は愉快である。花見が盛んな江戸の春に、長住まいの熊さんと辰つぁんが花
見をする。そして、この機会に少々金儲けをしようではないかと、2人は夢を描く▼酒を仕入れ
てコップ1杯を10銭で売ることにした。2人の胸中はザクザクと入る銭で満杯である。だが、途
中で熊さんがのどの渇きを覚えた。そこで「辰つぁんや、酒を一杯売ってくれ」。もちろん代金は
きちんと払う。元気になった熊さんだが、次に辰つぁんののどが渇く。しかも先ほどの10銭が手
元にある▼こうして2人は同じ10銭を使って酒を味わう。だが花見会場に着いた時、売るべき
酒は全部飲んでいた。2人はそれでも売り上げの計算をする。たくさんの銭があるはずと目論
んだのであるが、財布をさかさにしても出てきたのは10銭だけだった。あの酒はどこへ行っ
た!。全身から力が抜ける▼だが2人には酒の仕入れ代金が追いかけてきた。売り上げがゼ
ロなのに、酒の債務だけは残っている。酒屋の親父は厳しい。信用してつけで売っただけ、さ
あ返していただきましょう。債務が残るなんて、考えていなかった。経済学者の笠新太郎(190
0〜67)は『花見酒の経済』(62年刊)に熊さんと辰つぁんを登場させ、信用の膨張に警鐘を鳴
らす▼株価が2万円を超えた。日本銀行の異次元ともいわれる超金融緩和が効いたようであ
る。だが膨張しすぎた信用は、どこかで収束しなければならない。酒屋の親父が出てきては困
る。熊さんと辰つぁんの二の舞になるなと、笠は今も言っている(とけいそう)

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