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愛縁奇縁
No.108:梯子を外された再生可能エネルギー
「上屋(じょうおく)抽(ちゅう)梯(てい)」の怖さ

中国の兵法といえば「孫子」が有名ですが、そのほかに民間伝承の兵法「三十六計」がありま
す。戦術を6段階にわけ、さらに6通りに分割して兵法を説いています。全部で36になるので
「三十六計」といわれています。
荒削りな部分があり、とても戦術とは呼べないようなものもあります。それでも分かりやすかっ
たためでしょうか、広く世間に流布しました。

〇その一つが「上屋抽梯」(じょうおくちゅうてい)です(28番)。「屋(おく)に上げて梯(はしご)を
抽(はず)す」の意味で、屋根に上らせてから梯子を外せば敵は下りたくとも下りられない。飛
び降りれば怪我をする計略です。
日本では「2階に上げて梯子を外す」として広く流布しています。おだてに乗ってうかうか2階に
上がったら梯子を外された。相手を恨むのですが、自分の軽率さがより多く悔やまれます。

〇イメージが悪い表現ですが、自動車のホンダではこれを経営管理の中心に据えていると聞
きます。つまり後戻りできない状況や極限の状況に自らを追い込むのです。そうなれば知恵を
絞ることになります。
同社ではさらにエスカレートして、梯子を外した後に、「火をつける」「タイマーを押す」といった
言葉も加わっているとか。これでは従業員もうかうかできません。なかなか厳しい戦略です。

〇最近話題の再生可能エネルギーでも「上屋抽梯」が生じました。
電力各会社が太陽光発電など再生可能エネルギーの受け入れ手続きを中断するといいま
す。
再生可能エネルギー特措法(2012年施行)は、発電全量の受け入れを電力会社に義務付け
ています。民間の発電を電力会社が購入することで、電力の安定供給に弾みをつけたいとの
思惑でした。先見性のある経営者は資金を調達し土地を手当てして太陽光発電などに乗り出
しています。新規の申請も目白押しです。
しかし受け入れ手続き中断となればそれらは宙に浮いてしまいます。既に資金や用地を手配
した場合、投下資本の回収ができるのでしょうか。大問題です。

〇電力各社は申し込まれた発電をすべて受け入れると、管内の需要を上回る恐れがあると説
明します。電力は余剰分が送電線に流れると機械が故障したり、あるいは送電設備が故障し
て大規模な停電を起こす可能性があるといいます。だからストップしたいのです。

〇しかし、これでは「2階に上げて梯子を外す」ことと、怒りは収まりません。電力各社の説明
会には予想以上の人が詰めかけ紛糾しています。
一方、政府には受け入れ策が行き詰まったとして、原発再稼働を急ぐ気配があるようです。あ
るいはその逆で暗に誘導しているのでしょうか。
「三十六計」の最後36番目の戦術は、「走為上(そういじょう)」です。「三十六計逃げるに如か
ず」です。「制度は東日本大震災後に国が付け焼き刃でつくったもの」と腰が引けている向きは
これを考えているのでしょうか。
とはいえ、どうすれば再生エネルギーを拡大できるか、せっかくの芽をつぶしてはなりません。
(黄色い風見鶏)


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