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愛縁奇縁
〇25年後の首都圏の生活を想定すると介護施設が13万人分不足するという。民間有識者で
つくる日本創生会議(座長=増田寛也元総務相)の指摘である。同会議は、だから高齢者を 地方へ移住させることを提言した。
同会議は昨年5月、「2040年までに全国約1800市町村のうち約半数にあたる896市町村
が消滅する恐れがある」と発表し、大きな話題を呼んだ。同報告は、20〜39歳の女性人口(出 産年齢人口)が半減する自治体を「消滅可能性都市」と見なしたもので、極端なケースでは当 該女性が2桁を下回る市町村も予想している。
驚くようなショッキングな同予測のおかげで同会議はすっかり有名になった。
○今回の提言も驚きである。提言は東京都と、周辺の千葉、埼玉、神奈川3県で高齢化が急
速に進んでおり、75歳以上の後期高齢者が175万人増えると予測。このまま推移すると、20 25年には介護施設が約13万人分不足すると推計した。この対応のため介護施設を増設する ことは、首都圏では不可能との指摘で、25年に至った時首都圏はパンクするという。
このため介護施設が充実している地方へ高齢者を移住させるべきだと述べる。新潟県では上
越市が候補に挙がっている。このほか富山、高岡、金沢、福井、青森、弘前、秋田、盛岡、山 形の各市が候補地で、全国41地区に上る。
もちろん移住促進のためには、交付金や助成金の対応を考えるべきとの提言も合わせて行な
い、国レベルでの財政措置の創設が必要と指摘する。
○神奈川県の黒岩祐治知事は「違和感がある」と述べたという。「住み慣れた場所で暮らし続
けることが1番」という主張を展開する東京都の舛添要一知事も肯(がえん)じ得ないだろう。
首都圏は高度成長期に地方からの若年労働者を受け入れた。大量の若年者の移住によって
豊かさを実現してきた。しかし、労働者の役割は高齢化と共に終わる。ごくろう様。それでは地 方へ帰りなさい。あるいは故郷へ帰りなさい。さようならと言っているようである。だが、それは ないだろう。
提言は生身の人間を工場や店舗のように配置替えしようとする。役割の終わった者が舞台か
ら去るのは仕方がないことであるが、政策が大掛かりになればなるほど、まるで現代の「姥捨 て山」である。老いた母を背負って山に向かう「姥捨」には、そうしなければ生きていけない過 酷な貧しさがある。
東京はそれほどに貧しいのか。
○だが提言は、要介護者の移住ではなく、高齢ではあるが元気な高齢者の移住を進めたいと
する。都会生活に見切りをつけて、地方での生活に切り替えたいとの欲求は誰にでもあるのだ ろう。だからそのような願望を抱く者の移住をしやすくすることが本旨であるようだ。 それがU ターンであれば、当事者にも市町村にもなじみやすい人生設計になるかもしれない。
だが地方も今は、人口減少時代である。そこに高齢者が国策で大挙して移住してきたとき、将
来、誰が介護するのか。なにがしかの交付金や助成金をニンジンにして人を動かすとしても、 当の高齢者の想いはどうなるのだろうか。
○人はいずれ老いる。今の元気な高齢者は早い時期にさらに高齢化する。介護が必要になっ
た時、その社会的な負担が地方に回ってくる。
地方はさらなる高齢化に追い込まれる。
(社主)
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