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長岡高専の「和算倶楽部」が算額を奉納
172年ぶりに根立寺(三島)へ

長岡工業高等専門学校(長岡市西片貝町888)の「和算倶楽部」が11月14日、オリジナルの
問題を記した算額を制作(縦44ab、横61・4ab)、三島地域の根立寺(こんりゅうじ・長岡市
上岩井)へ奉納した。同部は2016年の創部以来、三島地域の「和算の里」プロジェクトなどの
「地域の宝磨き上げ事業」と連携して、和算の研究を続けてきた。こうした経緯から、算額が残
ることで名高い同寺への奉納をした。
奉納に当たっては、真言宗豊山派徳聖寺住職で根立寺住職を兼務する中村賢識師と同寺副
住職の中村宏識師が、祈願成就の観音経(法華経)を唱え奉納を祝した。奉納には、三島地
域の関係者や「和算の里」プロジェクトの関係者なども立ち会い、同部の快挙を讃えた。

172年ぶりの算額奉納

往時「和算」の問題や解法を記した額(算額という)を神社や仏閣に奉納することが流行した。
問題が解けたことを神仏に感謝したのである。算額は新潟県だけでも81面が知られている。こ
の内25面が現存し、長岡市には5面が残っている。蒼柴神社(悠久町)、秋葉神社(栃尾地域
谷内)、三島地域の根立寺(こんりゅうじ)観音堂(上岩井)、諏訪神社(七日市)、諏訪神社(吉
崎)である。
同部奉納の算額は諏訪神社(長岡市七日市)の奉納算額を参考にして、江戸時代からの伝統
に基づき、同じ様式で制作した。問題の「正三角形に正方形の3つの角が内接する辺の長さを
最小にする方法をのべよ」はオリジナルで、これに解法と説明を記している。
奉納した算額は当面、同寺本堂で展示し、その後は同寺観音堂で展示する。江戸時代から伝
わる歴史ある算額と和算倶楽部が制作した令和の算額が、並んで掲げられることになる。
遠藤正敏三島支所長、小林裕みしま観光協会会長、松村昌幸三島中学校校長、田村明美三
島支所地域振興課教育支援担当係長も参列し、172年ぶりの算額奉納を祝った。
遠藤支所長は算額の奉納を喜び「脇野町と言えば里山。(里山からの材を活用して)鋸、宮大
工、和算が発展した。(三島からは)有名な棟梁もいっぱい出ている」と誇り「郷土資料館に新
しいコーナーを作る予定です」と話した。新コーナーは「実在する風景にバーチャルの視覚情
報を重ねて表示するARの仮想空間みたいなものや、釘を一本も使わない組木なども展示した
い。子供たちにも興味を持ってもらえるようにしたい」と抱負を話している。同支所地域振興課
の廣川明則課長は「現存する算額を調べていくうちに上岩井、新保に奉納した形跡があった。
江戸で学んだ人が三島に住み、広めていった事もわかった」と話す。同和算倶楽部との連携
についても、「高専と教育支援の連携で繋がることができた」と喜ぶ。

「日本独特の解き方や図解が面白かった」と学生

奉納に参加した同部の学生メンバー(谷悠さん、加藤祐樹さん、長谷川柊太さん)は「1年生で
は習っていない、2,3年くらいで解ける問題だった」「数学の解き方が変わっていて面白い」
「日本独特の解き方や図解が面白かった」などと話し、和算の手法に感嘆する。
同倶楽部の指導に当たっている長岡高専一般教育課程の山田章教授(53)と涌田和芳名誉
教授(70)も奉納に参加した。OBの島津大さん(長岡技術科学大学機械創造工学課程3年)も
駆け付けた。島津さんは在学中に「和算のオリジナルを作ろうと勉強して準備までしてきたが、
卒業で叶わなかった」と思い出を話し、後輩の手で実現したことを喜んでいた。
三島地域の和算家には新保に米持矩章・米持矩義・片桐總盈、大野に原村本、吉崎に遠藤
棟重・遠藤乗安、七日市に吉原乗義、上岩井には小林重克・矢川政平などがいた。石井神社
(上岩井)参道入り口には和算家で測量家の足立数衛の碑があり、門人は1000人を下らな
かったと伝わる。
同部を指導している涌田和芳名誉教授は2020年に『新潟の復元算額から和算の独創性を
知る』(涌田和芳・外川一仁著)を考古堂(新潟市)から発刊し、和算の啓蒙に努めている。
「和算は直接役に立たないかもしれない。だが、その当時の人達が数学を学んできたこと、先
人たちがいろんな事に取り組んできたことが活かされている。江戸時代は身分社会、封建社
会であったが、その中にあっても学問の世界は開かれていた。日本中何処に行っても(和算
を)学ぶことができた。新しい形を取り入れていくことができた」と話している。

学ぶことが大事

20年以上前から「新潟の算額」をテーマに研究している涌田名誉教授は、蒼柴神社の算額(1
801年、松村屋長右衛門・當銀屋萬六・平石屋興治兵衛が奉納)に、圧倒されたことがあると
いう。「何とか読めるようにしたい。無くなってしまう前に復元さえすればわかる」と思い、江戸時
代の算額集を取り寄せ研究した。幸い、高専の先生方も独自に研究されており、「その道」の
専門家が多かった。「日本史、地方史の研究家、古文書をすらすら読める人が大勢いたおか
げで大いに研究に役立った」という。こうして傷みが酷かった蒼柴神社に残る算額も修復した。
同部を指導しながら現存する県内の算額を一つずつ分析、解説している。「和算には、西洋の
数学とは異なった発想があり、現代数学として新しい結果を導き出すことが期待される」とも述
べる。「学ぶことが大事」と同部の部員に温かなまなざしを向けている。

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イルミネーションで地域活性化(2021.12.10)
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