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この人に聞く
竹細工職人・葛綿慎さん
地元の伝統工芸「竹細工」を伝授
大勢の生徒が技法を学ぶ
山間で暮らす農家の人たちは、冬になると雪に埋もれ外では仕事ができない。そんな時
、農閑期の手仕事として、その土地独特の様々な内職をしていた。栃尾地域の上塩地区で
は、冬の間は昔から伝わる竹細工に精を出し、囲炉裏端で籠(かご)やザルを作って売り
に出かけた。しかし、時代の流れとともに竹細工製品の需要は失われ、今では作れる人も
ほとんど残っていない。
そんな中、同地区で今でも竹の工芸品作りを続けている人がいる。
葛綿慎(くずわたまこと)さん81歳。竹細工の伝統と技法をなんとか末長く後世に残し
たいという思いから、2024年5月、地元の上塩地区に「竹細工道場」を立ち上げた。
3月27日、道場を訪問し、笑顔で迎えてくれた葛綿さんから話を聞くことができた。
伝統工芸の技法をなんとか残したい
上塩地区は、栃尾の中心部から旧下田村(現三条市)へと繋がる県道9号線沿いにあ
る。田畑には残雪がまだ多く残り、 各住宅の軒先でも、山と積まれた雪が今冬の大雪
の痕跡を伺わせた。
鬱蒼とした竹林を背にたたずむ古民家・「竹道場・松兵衛」(松兵衛は葛綿家の屋
号)は県道から少し入ったところにあった。葛綿さんは同地に生まれて地域外で暮らし
たことはない。長年旧栃尾市役所に勤務し定年を前に早期退職した。その後は農家をし
ながら、時間を見つけてはビニールハウスの中で竹細工製品を作っていた。完成した製
品を知人に贈ると大変感謝された。それを見たとき、「昔から伝わる工芸をなんとか残
していきたい」という思いが段々強くなってきたという。
同地では、農業を生業としていた人のほとんどが竹細工をやっていた。冬季間、出稼
ぎに出なかった人は家で竹細工をし、出来上がった製品を天秤棒の両端にぶら下げ、肩
に担いで見附市にあった問屋に売りに行った。葛綿さんも両親が作るのを見よう見まね
で自然と覚えたという。現在道場になっている古民家は、母親の実家が空き家になりそ
れを借用している。
道場開設のきっかけは人との出会い
道場を開くきっかけとなったのは奈良場香織さん(38)との出会いだった。2022
年、夫の仕事の関係で東京から栃尾に移住し、へちま農家を始めた奈良場さんが、へち
まの蔓(つる)を這わせるために使用する支柱を探していた時、使っていなかったビニ
ールハウスのパイプを分けたことから知り合いとなる。
その後、奈良場さんから「竹細工を教えてほしい」との要請が舞い込んだ。連絡を受
けた時、竹細工を受け継いでくれる人が現れたことで葛綿さんは喜んだ。また、道場開
設の提案をしてくれたのも奈良場さんだったという。
脱プラエコライフへの移行
もともと、天然素材に囲まれた生活にあこがれていた奈良場さん。世の中の生活用品はすべ
てがプラスチック製だが、今一度、自然界の植物などから生まれ出される製品への復活を望ん
でいる。スポンジなどへの加工販売をするへちま農家をしながら、少しでもその思いに近づけた
いと、天然素材の魅力の発信に取り組んでいる。奈良場さんは「自然と調和した暮らしにあこが
れた。ザルやかごなど、昔からコンテナ(入れ物)はすべて竹だった。人々の暮らしの中から、変
えられるものは変えていきたい」と、脱プラスチック、エコライフへの思いを語った。
修業の一歩は山で竹を切ることから
道場の開催日は、5月~12月の農繁期と、1月~4月までの農閑期の2シーズンに分
かれている。農繁期は火・土曜日の週2日間。農閑期は火・金・土曜日の3日間。いず
れも午前10時~午後5時まで。会員であれば自分の時間に合わせて、いつでも訪れて練
習に励むことができる。現在、年間を通しての会員はおよそ30人。1日平均7~8人の
会員が道場で修業をする。また、月に2回、第1土曜日と第3火曜日はフリーの日とな
っているため、道場を訪れ誰でも体験できる。
竹の収穫時期は秋から冬が最適といわれている。作業はまず、裏山に入りみんなで竹を切り
に行くところから始まる。広い竹林からは、集落の人たちの理解もあり、好きな太さのものを持ち
帰ることができる。
卒業まで2年は必要最後までがんばる
取材に訪れた日は、7人の女性会員が一生懸命竹細工に挑戦していた。
自分の背丈ほどの竹をナタで縦に割り、中にある節を削っていく。その後、竹を細かく
割り薄くした竹ひごを作り、それを編み上げて製品を作る。均等な幅や厚さに割ること
ができるのは、経験を積んで自然と手が感覚を覚えるまでという。竹ひごの幅や厚さを
そろえることで、曲げたときに美しい円形を作ることが出きる。葛綿さんが作業しなが
ら会員に声をかけると即、周りに集合し、師匠の手元に目を注ぎながら説明に耳を傾け
ていた。
同道場を卒業するためには段階を踏まなければならない。幅広い竹ひごを使った荒目の
小さなかご作りを第一段目とし、みかん籠、中ざるの製作試験を間に挟み、最終の卒業
作品は、物がこぼれない隙間のない手籠の製作だ。道場主の葛綿さんは「卒業まで2年
はかかる。よって、同道場からの卒業生第1号は、今年の5~6月頃になるのではない
かと楽しみにしている」と期待を示した。
各地から集まる会員
会員はいろいろな地方から集まっている。市内はもとより新潟、見附、東京からの人も
いるという。この日、松之山(十日町市)から通っている女性は「物を作ることが好
きでわら細工などもやっている。いつか、竹で何か作りたいとずっと思っていた。農業
をやっているため農閑期を選んだ。冬場の通いは大変だが、何年かかっても、必ず卒業
するように師匠から励まされている」と笑顔で話した。
同道場では、葛綿さんの製作した商品と、会員の皆さんが苦心して作った製品が展示
販売されている。大勢の人が道場に来て、自然素材である竹の魅力を直に手に取って見
てもらうことを望んでいる。
「竹道場 松兵衛」(長岡市上塩)、新規入門の申し込みはインスタグラムでの受付とな
る。

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